頭痛外来のご紹介
院長の私も片頭痛と緊張型頭痛持ちで、片頭痛の発作がひどいときには頭に心臓がくっついているようなひどい拍動性の頭痛で座っているのが本当につらくなります。しかしながら、頭痛は、本人の訴えが中心であるため周囲の人の理解が得られやすい症状ではありません。そのためずっと我慢したり、放っておいたり、頭痛薬を習慣的に内服しているととても厄介な頭痛になってしまいます。頭痛には、大きく分けて命に関わる怖い頭痛とそうでない頭痛に分けられます。この2つを見分ける一番の方法は、痛みの発症形式と時間経過です。
成城脳神経クリニックの頭痛外来では、さまざまなタイプの頭痛に対して、それぞれの患者さんの日常生活や仕事に合わせて最適な治療を行っていきます。
頭痛としっかり向き合うことは、仕事に集中したり安定した日常生活を送るための第一歩です。
頭痛は、大きく次の3つに分類できます。
1. 脳の機能障害によって繰り返し持続的に起こる頭痛(一次性頭痛)
2. 他の病気によって引き起こされる頭痛(二次性頭痛)
3. 脳神経に痛みがある病変とその他の顔面の痛みによる頭痛
これから、脳の機能障害による一次性頭痛を中心に説明していきます。
緊張型頭痛(肩こり・首こり頭痛)
最も多いタイプの頭痛です。肩こり・首こり頭痛として知られています。人間が起きて活動している時には、背中や首の後ろの筋肉が常に休みなく働いています。首の後ろの筋肉は頭をきちんと立てるのが仕事です。その証拠に居眠りしていると頭が前や後ろにガクッと倒れるのを経験したことがあると思います。頭がたれるのは、睡眠によりこの筋肉が休んだからです。
筋肉が働きっぱなしになって持続的に収縮していると筋肉の中を走っている血管が押しつぶされてしまいます。血管がつぶれた状態が続くと血流が減ります。そうなると血液からの栄養源のブドウ糖と酸素が少なくなるので筋肉には疲労物質である乳酸のカスがたまっていきます。これは、酸であるため、周囲の組織を刺激して痛みが出る、これが緊張型頭痛の原因と考えられています。
人間の腕は足の様な強固な関節を胴体と作っていないため、腕は僧帽筋と肩甲挙筋という筋肉で首から吊り下げられているだけです。これらの筋肉は腕の重さを支えるためにいつも働いています。だからいつも乳酸がたまって痛くなります。これが肩こりの原因です。
寝ると翌朝には改善するのは、寝ている間に首と肩の筋肉が休んで筋肉の収縮が和らいだため、血流が再開して乳酸がたまらなくなったからです。
片頭痛
頭痛を訴えてクリニックを受診する患者さんの中で最も多いタイプが片頭痛です。片頭痛の文字を見ると片側だけが痛むように思えるかもしれませんが、両側同時に痛むこともめずらしくありません。強い頭痛のため寝込んで仕事や学校を休むなど社会生活に悪影響を及ぼします。また、痛みだけでなく、悪心・嘔吐、音・光・におい過敏、めまいなどの症状も日常生活に支障をきたします。
1. 前兆のない片頭痛
ズキンズキンと心臓の鼓動に伴うようなリズムをとる痛みです。片側の側頭部・前頭部に多くみられますが、40%は両側性です。頭痛発作の程度は中等度〜重度で4〜72時間持続します。歩行や階段の上り下りなど日常生活動作により頭痛は悪化することが多く、暗い静かな部屋でじっとしていたくなるのが特徴です。
2. 前兆のある片頭痛
典型的前兆をともなう片頭痛
前兆は通常5〜20分にわたって広がってきます。それに引き続いて頭痛が起こるのが特徴です。前兆はジグザク形の光が徐々に拡大して移動する閃輝暗点のような視覚症状やチクチク感が体の左右どちらか半分から顔面や舌に広がっていく感覚症状などがあります。
①典型的前兆に頭痛を伴うもの
②典型的前兆のみで頭痛を伴わないもの 頭痛のない片頭痛です。
脳幹性前兆を伴う片頭痛
ろれつがうまく回らない、ぐるぐる回るめまい、耳鳴り、難聴、ものが二重に見える、手足の協調性が乱れてバラバラに動く、意識がぼーっとしてくる、このうち少なくとも2つの症状が前兆として現れる頭痛。脱力を来すものは含みません。
片麻痺性片頭痛
1. 家族性片麻痺性片頭痛
前兆として手足の脱力などの運動麻痺を伴う片頭痛。第1度または第2度近親者に同じ症状を認めます。
2. 孤発性片麻痺性片頭痛
前兆として手足の脱力などの運動麻痺を伴う片頭痛。第1度または第2度近親者に同じ症状を認めないものです。
網膜片頭痛
片目にギザギザの光が見える、ものが見えなくなるなどの視覚に関わる発作が片頭痛に伴って繰り返し起こるタイプです。
3. 慢性片頭痛
大部分は前兆のない片頭痛として始まりますが、片頭痛の発作が月に15日以上の頻度で3か月以上続く状態です。
群発頭痛
片側の眼の周りや眼の上、側頭部に目をえぐられるような非常に強い頭痛が出現して15分から3時間ほど持続します。頭痛と同じ側の目が充血して赤くなったり、涙や鼻水がでたり、顔がほてって汗をかく、瞳孔が縮んでまぶたが下がるなどの自律神経が障害された症状を伴います。痛いときにスマホで顔の写真を撮って持ってきてもらうとすぐに診断できます。片頭痛が暗いところで動かずに痛くなるのと対照的に患者さんは痛くてじっとしていられないので落ち着かずに興奮して歩き回ります。
男性に多く、発作に発作期・寛解期という周期性があるのも特徴的です。種々の薬剤や酸素の投与など組み合わせて治療します。
腹部片頭痛
突然起こる腹痛でへその周囲にみられます。発作がないときには全く症状がありません。男児に多く見られ嘔吐を伴うことが多いのですが、下痢もあります。大部分は、後に片頭痛を発症します。
持続性片側頭痛(hemicrania continua)
頭部の片側に中等度以上の頭痛が持続して、同じ側の自律神経症状を伴うこと、インドメタシンが非常によく効くのが特徴です。自律神経症状としては結膜充血、涙を流す、鼻づまり、鼻水、まぶたが下がる、瞳孔が縮むなどの他にも、顔がほてって赤くなる、発汗、眼のかゆみ、などさまざまなものがあります。また、頭痛の増悪に伴って興奮状態や落ち着きの無さがみられるのも特徴です。
性行為に伴う頭痛
オルガスム前頭痛は首もしくはあごの筋収縮をともなう鈍い痛みで、性的興奮が高まるにつれて増強します。オルガスム時頭痛は、オルガスム時に突然起こる爆発性の頭痛で拍動性もしくは刺すような痛みです。後頭部や頭部全体に出現します。性行為中にだけ起こる点が片頭痛と異なります。
薬剤乱用頭痛(Medication-overuse headache : MOH)
片頭痛や緊張型頭痛の患者さんが頭痛治療薬を3か月以上定期的に乱用した結果、頭痛の頻度や持続時間がかえって増加して慢性的に頭痛がおきる状態です。頭痛治療薬を1か月に10日以上使用した場合に起こります。
慢性関節リウマチの患者さんが鎮痛剤を大量に使用しても頭痛発生が問題になることはないため、片頭痛や緊張性頭痛の病態そのものがMOHを引き起こす素因になると考えられています。群発頭痛で起こることはまれです。
少し難しくなりますが、大切なことなので詳しく説明します。MOHの発生機序は確立されているわけではありませんが、トリプタンによる5-HT受容体の慢性的な刺激が受容体の感受性を低下させるようになるdownregulationを引き起こすことが知られています。また、トリプタンによりMOHでは、血液脳関門を通過しないスマトリプタンよりも、血液脳関門透過性の高いゾルミトリプタンやリザトリプタンの方が、MOHの成立が早いことが知られています。薬剤による中枢性の受容体発現や受容体機能発現機構の変調がMOHの発症に重要な因子であることが推測されています。
治療としては、予防薬の内服を中心にして、頭痛薬を数日間中止することです。非常につらいのですが、何とか頭痛をこらえて薬の内服を2日間以上我慢するとMOHのコントロールができるようになってきます。この壁を乗り越えるまで私たちと一緒に頑張りましょう。
成城脳神経クリニックの頭痛治療
頭痛インパクトテスト(HIT-6)
スコア
60以上:頭痛が日常生活にかなりの影響を与えています。重度の頭痛と考えられます。頭痛とHIT-6スコアに関して医師にご相談することをお勧めします。
56~59:頭痛が日常生活にかなりの影響を与えています。頭痛とHIT-6スコアに関して医師にご相談することをお勧めします。
50~55:頭痛により、家庭、仕事、学校や社会活動が妨げられている状況は正常とはいえません。次回、診察を受ける際に、HIT-6のスコアについて医師に相談下さい。
49以下:現状では、頭痛が日常生活にほとんど、あるいは全く影響を与えていません。